OpenOCD小ネタ19 -Nuvotonドライバの統合-

今をさかのぼること2年前、いろんな行き違いによって同じNuvotonのCortex-M0
向けフラッシュ書き込みドライバが同時にマージされる事態になってしまいました。

その間もいろいろあってなかなか更新できなかったのですが今秋に両者を統合
するドライバがマージされたのでようやく報告できた次第です。

さて、この統合されnumicroと名前を変えたこのフラッシュ書き込みドライバは
少しトリッキーな動きをします。それを少し解説します。


●Undocumented Registerの存在
NuvotonのARMマイコンのフラッシュ領域はユーザプログラム用のAPROMとブート
ローダ専用のLDROMの二つがあり、書き換えをするためにはそれぞれ別のフラッシュ
ブートモードから再起動する必要があります。つまりAPROMを書き換えたい場合は
LDROMのブートモードに切り替えコアリセットを掛けるという手間がかかります。
これが公式のマニュアルに記載されている手順です。

しかし!このような煩雑な手順を踏まなくてもどのモードでもAPROM,LDROM,
CONFIGの書き換えそしてチップ全消去コマンドが実行できる方法が解析により
見つかっています。

マニュアルに記載されていないレジスタ0x5000C01Cに1を書き込むとフラッシュ
に対する全てのアクションが出来てしまうようです。Nu-Linkのツールではこれを
自動で行っていることから気づき解析されたみたいですね。

そして上記の成果はOpenOCDに反映されましたがこのときはまだmini51シリーズのみ
だったため、私の手持ちの他のシリーズ(NUC120,NUC220,M051,NANOシリーズ等)で
この技が効くかどうか確認し、OpenOCDの更新が落ち着いたタイミングを見計らって
今回の統合をおこない、無事マージされました。長かった…!


上記の修正を掛けたドライバでNANO130に書いた時のログはこんな感じです。

> "C:¥Devz¥Coreutils¥bin¥make.exe" program
openocd -s C:/Devz/ARM/OCD/tcl -f interface/vsllink_swd.cfg -f target/numicro_swd_flash.cfg -c "mt_flash main.elf"
Open On-Chip Debugger 0.10.0-dev-00036-g48787e1-dirty (2015-10-02-09:14)
Licensed under GNU GPL v2
For bug reports, read
http://openocd.org/doc/doxygen/bugs.html
Info : VSLLink SWD mode enabled
swd
adapter speed: 1000 kHz
none separate
cortex_m reset_config sysresetreq
Info : Versaloon(0x15)by Simon(compiled on Sep 16 2014)
Info : USB_TO_XXX abilities: 0x0000176E:0x010001EF:0xC0000007
Info : clock speed 1000 kHz
Info : SWD IDCODE 0x0bb11477
Info : NuMicro.cpu: hardware has 4 breakpoints, 2 watchpoints
target state: halted
target halted due to debug-request, current mode: Thread
xPSR: 0x21000000 pc: 0x000002d6 msp: 0x20003ff0
auto erase enabled
Info : Device ID: 0x00113034
Info : Device Name: NANO130SE3BN
Info : bank base = 0x00000000, size = 0x0001ec00
Info : Nuvoton NuMicro: Sector Erase ... (0 to 40)
Info : Nuvoton NuMicro: Flash Write ...
wrote 20992 bytes from file main.elf in 4.078360s (5.027 KiB/s)
verified 20800 bytes in 0.281266s (72.218 KiB/s)
shutdown command invoked

> Process Exit Code: 0
> Time Taken: 00:05




一応デバッグもできますが今回の統合に至るまでにnuvotonのドライバの他にadi_v5や
cortex-mのコードにかなりの修正が掛かっており、リセット直後の状態が特殊な
nuvoton系のARMマイコンでは正攻法が通じなくなっていました。
そこで上手くデバッグできるようにcfg側も仕込んでトリッキーなことをしています。
gdbが接続した瞬間にresetとhaltを連続してかけ("reset halt"だと駄目)、さらに
プログラムカウンタを強制的に0にしておきます。


当然割り込みベクタの一番頭で停止しますがここでcontinueすると・・・


無事main関数の頭でブレークしました★
ちなみにOpenOCD側だけでは不完全でプロジェクト側も多少の修正は必要でした。
おきぱNUC120,M0516のプロジェクトはすでに新しいOpenOCDに対応しています。





念のため他の品種も洗ってみたのですがnuvotonドライバだけではなくLPC4300系の
SPIFIの書き込みもおもいくそ影響を受けていて書き込みできてませんでしたorz

↑最後のほうでエラー出てますがコアリセットをソフト的に強制的に掛けてるので
 こうなります。動作としては問題ないです。

こちらも現行のOpenOCDで正しく動作するようにcfgファイルに修正をかけておきました
ので皆さん安心して使い倒すことができると思います。


根幹に近い文字通りコアな部分をひっそり変えられると思わぬところで上手く動か
なくなるのはよくある事なので私の目の黒いうちはしっかり注視していこうと思います。

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