STM32F4シリーズを使ってみる2 -STM32F4のメモリ構成を理解し基礎を作る-
20111201追:
つい最近複数の方からメールでご指摘いただきましたが、私はこのwikiとは関係ありません。
私の今回の記事からいくつかの文章をコピペしてたようですが、私が後日誤りに
気付いて修正した内容は修正されずにそのままになっているようなので注意してください。
20111201追:
今回は前回述べたとおり192kByteに増強された内蔵SRAMをどのように使うかを決定し、
お約束の標準関数の使用やFPUを用いた浮動小数点の計算をSTM32F4 Discovery
上で実践してみます。
STM32F4系は192kByteのSRAMを持っていますが、実際は112kByte,16kByte,64kByte
の3ブロックに分かれています。後で図示しますが、112kByte分はAHBバスマトリクスに
接続された汎用SRAMで,16kByte分は同じくAHBバスマトリクスに接続されているものの
112kByte分のSRAMと同時に読み書きができるように(主にEtherNetMAC&USB-OTG(HS)
用に特化されているようです)なっています。アドレスは連続しているのでEthernetや
USB-OTG(HS)を使うつもりがない人は128kByte分まるまる汎用SRAMとして使用する
ことが出来ます。
その他細かい制約があるので各自データシートやマニュアルを参照のこと(丸投げ!)。
もうひとつの64kByte分はCore-Coupled Memory(CCM)と呼ばれ、Cortex-M4Fのコアに直
接接続されています。このSRAM領域はAHBバスマトリクス上にはなく、マニュアルを読
む限りではDMAの読み書き先としてこの領域を使用できないようです。
(20111026追:実際に試しましたがHardFaultになったりDMAが完了しなかったりで、
やはりDMA用のメモリとして使用できませんでした)
また、128kByte分の汎用SRAMもSTM32F4のコアクロックと同様の168MHzでアクセスできる
ので俗に言うTCM(Tightly-Coupled Memory)としての速度的優位差もほとんどないでしょう。
以上の点を踏まえて、STM32F4系でつぶしが利くようにねむいさんはSRAMの構成を下図
のようにしてみました。
64kByteもある広大なスタック領域を君はどうつかうのか!?
注:CCM領域はDMAできません!!大事なことだから2度言います!!
この構想をリンカスクリプトに落とすと下図のような感じです。
この下にも長−く各セクションの定義が続きますが省略。
この構成で前回のTFT-LCDの表示テストも改めてクリア・またprintf系の標準関数も
UARTにリターゲットして動作を確認しました。
次にFPUを使って浮動小数点の演算のテストに取り掛かりました。
Cortex-M4Fは単精度の浮動小数点ユニットを持っています。GCCコンパイラからこの機能
を使うためには浮動小数点命令に落とし込むようにフラグを与えてあげないといけません。
具体的にどういうフラグを与えるかについては酔漢氏が昨年に考察されていました。
氏の情報を元に私の環境では以下の箇所の変更で浮動小数点命令に切り替わりました。
-msoft-float("-mfloat-abi=soft"と同じ意味)
↓
-mfloat-abi=softfp -mfpu=fpv4-sp-d16
-mfpu=fpv4-sp-d16は必須です。これが無いと倍精度の命令を使ってしまい、実行
したとたんにHardFaultになってしまいます。
ちなみに-mfloat-abi=※※※※ の意味はそれぞれ以下のように表されます。
-mfloat-abi=soft :浮動小数点の演算に整数命令のみで構成された浮動小数
点演算ライブラリ(soft-float)を使う。
-mfloat-abi=softfp :浮動小数点の演算に浮動小数点演算命令を使うが、floatを
引数にする関数の呼び出し規約はsoft-floatと同じく汎用
レジスタを使って値を渡す(ソフトウエア・リンケージ)。
-mfloat-abi=hard :浮動小数点の演算に浮動小数点演算命令を使い、floatを
引数にする関数は浮動小数点レジスタを使って値を渡す。
酔漢氏のページでは"-mfloat-abi=hard"となっていました(GCC4.5.xからこのオプショ
ンが利用可能)が、無償で利用できるSourceryCodebenchLite版にある標準関数等のラ
イブラリはsoft-floatでビルドされているため、標準関数を絡めるとリンク時に引数渡し
の不整合がおきてエラーになります。これを回避するためにはCodebenchLite版のビルド済
ライブラリを使わない設定(-nostdlibオプションを付ける)を付与し、同じ機能を持つライブ
ラリを一から"-mfloat-abi=hard"でビルドしなおさなければなりません。
というわけでいちいちビルドするのめどいので以後は"-mfloat-abi=softfp"で。
20131226追:
GNU Tools for ARM Embedded Processorsなら"-mfloat-abi=hard"が使用可能です!!
これでFPUの命令を含むプログラムがビルドできるようになりましためでたしめでたし
・・・と言いたい と こ ろ だ が !
ここも嵌ると思うので記しておきます。Cortex-M4Fの仕様によるとFPUは浮動小数点命令
が行われる前に(つまり起動時)に有効にしてやらないといけません。
STM32F4xxのサンプルではsystem_stm32f4xx.cのSystemInit()の最初で実行されている
ものもありますが、テンプレートからsystem_stm32f4xx.cを生成するとこの記述が欠け
ているのでほとんどの場合は自分で追加しないといけません。
20120410変更:
実際にコンパイルオプションを変えて浮動小数点演算の箇所のアセンブラリストを
比較してみました。Launchpad提供のGNUToolchainを使用しています。
●-mfloat-abi=soft
FPUを一切使用しない場合です。FPUのレジスタは一切使用されず、また浮動小数点
演算ルーチンが呼ばれています。
●-mfloat-abi=softfp -mfpu=fpv4-sp-d16
FPUを使用する場合(SoftFP)です。関数の値は汎用レジスタで渡されています。
●-mfloat-abi=hard -mfpu=fpv4-sp-d16
FPUを使用する場合(HardFP)です。関数の値もFPUレジスタで渡されています。
printf関数は暗黙の型変換によってfloat値を渡してもdouble型に強制変換されます。
単精度のFPUしかもたないSTM32F4ではdouble型に変換するための__aeabi_f2dルーチンが
必ず挿入されます。
ってわけでこれでほぼ完全にCortex-M4Fとして開発を行う下地が整いました!
現在はSDカードとSPI接続のTFT-LCDとUARTをつなげていつものをこしらえるところまで
進みました。STM32F4 Discoveryの回路構成の都合で、SDIOとFSMCが使用できない
のでSDカードもTFTLCDもSPI接続です。はやくこいこいSTM32F407ZGT6!
あ、そうそう、Chan氏のTJpegDecも組み込ませてもらってます。
STM32F4はぢめました
…きちゃった♥
…STM32F2すら使いこなせてないうちにCortex-M4コアのSTM32F4が来てしまいました。
CPUクロックが168MHzにアップした上にFPU&DSPユニットが付きさらにメモリも192kByte
までお付けしてお値段据え置き(購入当時日本円換算で1280円)ですって奥さん!!
チップ単体はまだ手に入らないので(これも時間の問題ですね)すが、評価キットとして
STからSTM32F4Discoveryがすでに販売されています。この評価キットはI2Sコーデックに
MEMSセンサもついていてアナログ信号の処理も手軽に扱えそうです。ていうかそういう
風に使わざるを得ないでしょうね…苦手ですが。
20111201追:
秋月さんからも1650円で販売されました!
てわけでさっそく動かしてみました。すでにSTM32F4Discoveryのファームウエアパッケ
ージで予習済みなのでいつものTFT液晶に何か表示するプログラムをビルドし書き込ん
でみます。
CodesourceryはすでにCortex-M4Fに対応しています。ビルドオプションとしては
少しの変更でビルド可能です。
(注:上記のオプションではまだ不完全で、FPUを使った演算になりません!
FPUを有効にする方法はこちらを)
STM32F2系(Cortex-M3)とアッパーコンパチであるため、OpenOCDはそのまま読み書き
とデバッグ(FPUレジスタ除く)を行うことが可能です!ねむいさんはビルドしたプロ
グラムの書き込みにVersaloonのSWDを使用しました。
(注:エラッタのせいでSTM32F2系とまったく同様のMCUIDとなっているようです。
VersaloonはコアIDのほうは判別は行っていないようなので引っかかりませんでしたが
FT2232系のJTAGアクセスではコアIDの判別に引っかかり、STM32F2系のcfgファ
イルのまんまだと警告を出しますが、先に述べたとおりアッパーコンパチのため、
とくに実害はありません。私が公開しているOpenOCD用のCFGファイル群はすでに
STM32F4対応済です。)
びぃぶろくんが、かわかわ美人さんに欲情すると困るので小さく
20120124追:
Gaijinさんがinai-sanはHENTAIだって
とりあえず今回はほんのさわりだけですが、次回はせっかく192kByteに増強してもアド
レスが連続してるのは128kByte分でそのうちの16kByteはEthernet&USBOTG-HSの
DMA専用に事実上取られてしまうので実質112kByteで残りの64kByteはバスマトリクス
上にないから微妙に使いどころがないという内蔵RAMの効率的な使い方とかをリンカ
スクリプトの組み方と交えて実践していこうと思います!
連絡・質問・免責は↑のリンクを
↓SNSもやってます↓
powered by まめわざ- ARM/STM32 (104)
- OpenOCD (27)
- ARM/NxP (34)
- ARM/Cypress (5)
- ARM/Others (3)
- ARM/Raspi (1)
- AVR (11)
- FPGA (4)
- GPS/GNSS (18)
- MISC (75)
- STM8 (1)
- Wirelessなアレ (16)
- ブラウザベンチマーク (28)
- 日本の自然歩道 (23)
- 1Wire温度センサDS18B20の偽物を追え!
⇒ ねむい (04/26) - 1Wire温度センサDS18B20の偽物を追え!
⇒ (04/08) - 中国自然歩道を往く -北伐!県境を越えて鳥取県に侵入せよ!-
⇒ ねむい (12/23) - 中国自然歩道を往く -北伐!県境を越えて鳥取県に侵入せよ!-
⇒ ひかわ (12/18) - 中国自然歩道を往く -北伐!県境を越えて鳥取県に侵入せよ!-
⇒ ひかわ (12/18) - いろいろ試す51
⇒ ねむい (06/26) - いろいろ試す51
⇒ ひかわ (06/10) - STM32G0使ってみる4 -1wireデバイスをいろいろ使ってみる-
⇒ ねむい (12/14) - STM32G0使ってみる4 -1wireデバイスをいろいろ使ってみる-
⇒ ひかわ (12/05) - 大緊急事案!!!1!Raspberry Pi Picoはぢめました!!1!!1
⇒ 竹本浩 (08/14)
- May 2023 (3)
- April 2023 (1)
- March 2023 (1)
- February 2023 (1)
- January 2023 (1)
- December 2022 (2)
- November 2022 (1)
- October 2022 (1)
- September 2022 (1)
- August 2022 (1)
- July 2022 (1)
- June 2022 (1)
- May 2022 (1)
- April 2022 (1)
- March 2022 (1)
- February 2022 (1)
- January 2022 (1)
- December 2021 (2)
- November 2021 (2)
- October 2021 (1)
- September 2021 (1)
- August 2021 (1)
- July 2021 (1)
- June 2021 (1)
- May 2021 (1)
- April 2021 (1)
- March 2021 (1)
- February 2021 (1)
- January 2021 (1)
- December 2020 (3)
- November 2020 (1)
- October 2020 (1)
- September 2020 (1)
- August 2020 (1)
- July 2020 (1)
- June 2020 (2)
- May 2020 (1)
- April 2020 (1)
- March 2020 (1)
- February 2020 (1)
- January 2020 (1)
- December 2019 (3)
- November 2019 (1)
- October 2019 (1)
- September 2019 (2)
- August 2019 (1)
- July 2019 (1)
- June 2019 (1)
- May 2019 (1)
- April 2019 (1)
- March 2019 (1)
- February 2019 (1)
- January 2019 (1)
- December 2018 (3)
- November 2018 (2)
- October 2018 (1)
- September 2018 (1)
- August 2018 (1)
- July 2018 (1)
- June 2018 (1)
- May 2018 (1)
- April 2018 (2)
- March 2018 (1)
- February 2018 (1)
- January 2018 (1)
- December 2017 (2)
- November 2017 (2)
- October 2017 (1)
- September 2017 (1)
- August 2017 (1)
- July 2017 (1)
- June 2017 (1)
- May 2017 (1)
- April 2017 (1)
- March 2017 (2)
- February 2017 (2)
- January 2017 (2)
- December 2016 (7)
- November 2016 (2)
- October 2016 (2)
- September 2016 (1)
- August 2016 (1)
- July 2016 (1)
- June 2016 (1)
- May 2016 (2)
- April 2016 (1)
- March 2016 (2)
- February 2016 (1)
- January 2016 (1)
- December 2015 (3)
- November 2015 (1)
- October 2015 (3)
- September 2015 (2)
- August 2015 (2)
- July 2015 (3)
- June 2015 (3)
- May 2015 (4)
- April 2015 (2)
- March 2015 (4)
- February 2015 (1)
- January 2015 (3)
- December 2014 (3)
- November 2014 (2)
- October 2014 (1)
- September 2014 (2)
- August 2014 (2)
- July 2014 (3)
- June 2014 (2)
- May 2014 (1)
- April 2014 (1)
- March 2014 (4)
- February 2014 (4)
- January 2014 (3)
- December 2013 (5)
- November 2013 (4)
- October 2013 (3)
- September 2013 (2)
- August 2013 (2)
- July 2013 (2)
- June 2013 (3)
- May 2013 (2)
- April 2013 (2)
- March 2013 (2)
- February 2013 (2)
- January 2013 (3)
- December 2012 (4)
- November 2012 (2)
- October 2012 (2)
- September 2012 (4)
- August 2012 (1)
- July 2012 (3)
- June 2012 (2)
- May 2012 (3)
- April 2012 (3)
- March 2012 (2)
- February 2012 (3)
- January 2012 (3)
- December 2011 (5)
- November 2011 (3)
- October 2011 (2)
- September 2011 (2)
- August 2011 (2)
- July 2011 (2)
- June 2011 (2)
- May 2011 (2)
- April 2011 (2)
- March 2011 (2)
- February 2011 (2)
- January 2011 (3)
- December 2010 (7)
- November 2010 (1)
- October 2010 (1)
- September 2010 (1)
- August 2010 (3)
- July 2010 (4)
- May 2010 (1)
- April 2010 (2)
- March 2010 (2)
- February 2010 (2)
- January 2010 (3)
- December 2009 (3)
- November 2009 (8)
- October 2009 (7)
- September 2009 (5)
- August 2009 (4)
- July 2009 (6)
- June 2009 (7)
- May 2009 (14)
- January 1970 (1)
Copyright(C) B-Blog project All rights reserved.